2013.04.11
2013年3月2日 道民会議シンポジウム/基調講演 猪風来氏
石狩の浜益で20年命がけの修行をし、たくさんの作品を生み出してきました。
今日、「古(いにしえ)の縄文」の研究が進み、やっと皆さんの頭に縄文のイメージがわくような段階になりました。そしてもう一つ、いにしえの縄文を復活させ、復活させたものから未来を生み出そう、という現代縄文が今、始動していることを、皆さんにはぜひ認識していただきたいと思います。私はすでに30年前に日本初の現代縄文アート展を開催しました。縄文復活の活動は、もう4、50年間うごめいてきた、ということです。
これは亀ヶ岡文様で、文様が二次元的に広がっている彩色縄文文様画です。
「縄文スパイラル」(2004年)
これはスペインで修行した虹彩技法の作品で、スペインのラスター彩という技法を用いています。造形は縄文文様ですが、それに色彩が加わるとこんなイメージになります。
「青のヴィーナス」(2003年)
これは岡山で作った「大霊峰シリーズ」です。大山(だいせん)など中国山地の山々を地元の陶土で作りました。山には重層的な霊気がわき出でていて、それらを透視して作品にしています。アボリジニなどもそうで、腹わたのなかまで描いているのは透視画法ですね。それと同じように縄文人も透視します。心眼で霊視し、ものごとをつかみます。それが火焔土器などに表現されます。私はそれを現代に応用し、発展させています。
「中国山地 大霊峰シリーズ」(2010年)
「大霊峰シリーズ」の制作風景(2010年)
これは磁器ですが、新縄文スパイラル作品—縄文磁器オブジェです。
「大地の雫」(2010年)
現代縄文には、縄文粘土で作る土器もありますし、陶土の陶器もあります。磁器もあります。また、絵画の縄文もあります。私の妻、染織家の村上美子さんはタペストリーで縄文の大きな連作を作っています。息子の村上原野は修行中ですが、めきめき腕を上げています。現代縄文は今とても熱い歴史を刻んでいます。なかなか目に触れていませんが、すでに新しい歴史を刻み始めています。自ら「縄文アーティスト」と名乗る20、30代が増え、私の美術館には「縄文アニメ作家です」と言う若者も来ました。音楽家もいます。このように芸術のいろいろな分野で活動が開始され、展開されています。「古の縄文芸術」、「現代の縄文芸術」が存在し、世界が注目しています。
根源をつかみ、応用させる力があれば、それは発展します。火焔土器は回転した表現のため、非シンメトリーになっています。それで私は回転の軸心をドーンと動かし、X、Y、Z軸があるうちのZ軸を丸ごと動かしてしまいました。さらにZ軸をスパイラルさせる。そうすると、このように大回転を起こした造形が生まれるわけです。
これは西洋的にみると混沌にしか見えません。しかし今説明したように、実にピュアな、最も根源的な形から出発していることがわかります。自然科学を熟知した人たちが、自然を透視して、そこでつかんだ精神世界を表現しているわけです。しかも三層になった表現です。
ちなみに20世紀アートは多視点画法で爆発しました。ピカソがアフリカからヒントを得て、向こう側の見えない顔も同時に引っ張り出して描くという多視点画法を作った。笑っている顔も泣いている顔も同時に描きました。たかだか多視点画法一つで、20世紀アートが爆発したのです。縄文は3つ、多視点、多時間、多次元です。これらがあれば、もっと爆発するでしょう。
つまり、21世紀の芸術は縄文から始動すると言ってもおかしくありません。それを感じるから、ケーナ博士は土偶展を開催しました。今度フランスでもやりますね。ミッテラン大統領も火焔土器が大好きで、フランス全土で火焔土器展を開催しました。
縄文の造形上の秘密をつかめば、新しい芸術が爆発します。かれらはそれを予感しています。そして、そういうものを今は持っていない。しかし、私たちはこの足下に持っています。これを黙って放っておく手はありません。私たちがその奥義を体得し、新しいものを作る。今、縄文アーティストは30人か50人に増えていますが、もっと爆発的に増やしていけば、新しい美術がもっと生まれてきます。そうなるためにも、この世界遺産登録を成功させるべきだと思います。この世界が認めた宝を私たちがもっと生かしていく。そういうものにしていけたらと思っています。